
千の仮面を持つ少女
「子どもの頃好きだった本はなんですか?」
4年ほど前 とある企画展のため
友人知人にたずねてみた。
わたし自身読書家でなかったこともあり
知らない本がほとんどだった。
「それはどんな話?」と聞くと
内容から逸脱し 読んでいた当時の
状況や心境を話してくれるのがおもしろく
知らないはずの幼き日の
彼らの姿が目に浮かび微笑ましかった。
たくさんの方に話を聞かせてもらったにも関わらず
その企画展を実現することはできなかったけれど
いくつかの作品は今回の個展『編繍 henshu 』で
発表させてもらえることとなった。
そのうちの一点《千の仮面を持つ少女》は
〈ガラスの仮面〉第1巻からうまれた作品。
大人が読む漫画というイメージだったので
3歳年下の友人Cの選書に「意外」と言うと
「母親の影響で幼い頃から愛読していた」とのこと。
絵本や児童書ではなく
漫画をあげたのはCだけだった。
そんなCはいま舞台制作の仕事をしている。
なにか導きのようなものがあったのだろうか。
今回初めて〈ガラスの仮面〉と
じっくり対峙してみる。
演劇に取り憑かれた主人公・北島マヤの
常軌を逸した行動や狂気迫る表情に
何度も跳ね返されそうになりながら
なんとか一気に読み終えた。
闘いの末 疲れ切った頭で
表紙をぼんやり眺めると第1巻のタイトル
〈千の仮面を持つ少女〉が訴えかけてくる。
“わかりました 確かめてみます”
ページをめくり北島マヤの顔が出てきては
ただひたすらにデザインナイフで切り出し
元のページに吹き出しのように縫い留める。
1ページに5つの顔が出てきたりすると
もう無理かもしれない…と挫けそうになったが
マヤの苦難に比べたら…と自分を律した。
途中 阿修羅像や三十三間堂などといった
ワードが脳裏をよぎる。
つまりは仏師とはこのような心境なのだろうか?
と思ったが いやいやきっと全然違う。
しかし完成した《千の仮面を持つ少女》の影に
わたしはどこか仏像のようなもの感じたのだった。
千の仮面を持つ少女
2026 / 本、糸
原作:美内すずえ『ガラスの仮面』
© Suzue Miuchi / HAKUSENSHA
Special Thanks: Suzue Miuchi, Izumi Amada
Photo: Takashi Homma
