Exhibition
ギャラリーエーでは、オードリー・フォンドゥカヴの個展をご好評につき7月4日まで会期を延長して開催しております。本展では、キャンバスやArches Paperに岩絵具などの顔料で描かれたペインティング約20点をギャラリーの2フロアに展示しております。
オードリーはフランスに生まれ、01年より日本に移り住み、以来、東京で意欲的に表現活動を続けています。 ペインティングやコラージュ、インスタレーションなど、多岐にわたる表現形式を用いながら、常に新しいアイデンティティを発表してきました。 同時にインディペンデントマガジン『TOO MUCH MAGAZINE』の編集者・アートプログラムディレクション、また、子どもたちにアートの楽しさを伝える『アカデミー・ボンポワン』のプログラムディレクションも担当するなど多彩な顔を持ちます。
近年は、珊瑚、銅、植物など、天然由来による顔料などを用いて、なるべく環境に負荷のない有機的な素材による抽象的なペインティングを描いています。オードリーは自身のアブストラクトな表現スタイルを地質学に例え、何層もの色彩と形態を重ねていく行為を感情や気分を受け入れるための方法だと言います。人間の内面にある自然なもの、不自然なもの、優しさ、強さなど、複雑な葛藤に対して肯定し、拒否や消滅ではなく変化や進化を信じて描きます。顔料が放つ繊細なニュアンスの色と光は彼女のその試みと相性良く共鳴しています。
新作展では、哲学者ライプニッツのモナド論での言葉『The best of all possible worlds』からインスパイアされたテーマをタイトルに据えています。ライプニッツは「いかにこの世界が混沌として見えようとも、そこには神によって調和、 統一性が保証されており、現実世界は可能なすべての世界の中で最善のものである」と唱えました。この考えは昔も今もオプティミズムすぎると批判もありますが、数学者でもあり論理的思考者であり、機械や科学を探求していた彼が、宇宙をより高度な創造物として理解しようとしたことに、オードリーは今あらためてたくさんの魅力を感じています。展示タイトル「best」の斜線にはライプニッツの言葉に彼女のアイデンティティを重ねて、比較の価値ではなくそれぞれの人が今、自由な形容詞で世界を感じれたらという希望のメッセージを込めています。
モナドの語源はギリシャ語のモナスで「単一」や「魂」を意味します。ライプニッツの哲学では、すべてのものはモナドであり、お互いがお互いを、また、お互いがいるこの世界全体も、それぞれの角度から切り取って反映するとします。 モナドはその視点に応じて宇宙を映し出す生きた鏡と同様で、その視点と同じだけの宇宙が存在します。 この「一」のなかに「多」を含むという多様性、統一性の思想もまたオードリーが興味と情熱を感じるアイデアであり、私たち生命が宇宙の一部であること、そして森羅万象の要素であるという思索が自らの絵画にも反響することを願っています。
開催概要
会期:2021年7月4日・日曜日まで
開廊時間: 12:00 – 18:00
休廊日: 月曜日・火曜日
終了いたしました
親子向け ギャラリーツアー
2021年5月22日(土)に開催いたしました
☆ ツアー参加費はオードリーの希望により、ネパールのこどもの為の学校建設や教育支援を行うプロジェクト「カルナ・シェチェン ( Karuna-Shechen )」へ全額寄付させていただきました。