Exhibition
free park 30
© Mayu Anzai
安齋茉由 green sea
Gallery A では9月14日(土)から29日(日)まで、アーティスト安齋茉由の個展『green sea』を開催いたします。 本展では、油彩の大型ペインティングやドローイングなど、約20点の作品をギャラリー空間へ多彩に構成し展示いたします。
このたび、2年ぶり2回目の個展を行う安齋茉由(1999-福島県生まれ)は、今春2024年に女子美術大学大学院美術研究科博士前期課程を修了しました。 2021年の「シェル美術賞」では、油彩画「free park」で桝田倫広審査員賞を受賞。 2023年には「Idemitsu Art Award」へ入選。 2024年2月には、福島県立美術館で開催された企画展「福島アートアニュアル・二次の彼方に」へ参加し、ACGカルチャーとの親和性を感じさせる創作に焦点があてられ大きな話題となりました。
安齋は近年、自由をテーマにした絵画 free parkシリーズを描くことに専心しています。作品の原点であり重要なモチーフとなるのは郷里である福島の田圃の風景です。 透明感のある色彩で描かれる空と草原の分割面に、人物の線がレイヤードする色面は、空想と現実の間のような不思議なイメージとして広がります。 描かれた人物は流動的に変容する揺らぎの痕跡を纏ってアニメーションのように浮遊し、フラットな画面でありながら奥行きを感じさせるユニークな魅力に溢れています。
安齋は一昨年の冬、14年間一緒にいた愛猫ミユとの突然の別れを経験しました。巡る季節とともに静かに不在を認識するなかで、生きるものは自然に抗うことはできないという無常を観じていきました。そして、静かに猫の外殻から自由になったミユの姿を透徹の視点でfree parkに描きました(free park 22)。安齋はこのことをきっかけに田圃の景色に生のはじまりの海を重ねて見るようになります。新生のfree parkに立ち上がる風は命の息吹となって緑の海を渡り、全景に自由と希望のきらめきが逞しく充溢することでしょう。 ぜひこの機会にご高覧賜りますれば幸甚に存じます。
安齋茉由
green sea
我が家では飼っていた動物が亡くなったり野生動物が家の近くで死んでいたら家の裏庭に土葬をする。
一昨年の冬に帰省した際、実家にいたミユは猫の形を止めて土と草に溶けていた。
私は土葬に立ち会うことができなかった。
公園で遊ぶ子供や動物の動きを追った線を自由の一部として描いてきた私は
動いていた体が静かに止まり、ほどけて溶けていくミユの姿を思い浮かべていた。
ミユが居るであろう地面を見つめて帰る日々が続いた。
母が彼女の近くに植えた花が無造作に咲き、段々と草が私の身長ほどに生い茂り、
やっと現実を認識していった。
ミユの外殻としての体はほどけて溶けてしまったけれど
彼女は猫の形から自由になったのだ、とも思うようになった。
人が手を加えなければ増え続ける草と土に飲み込まれる様から
生き物である私たちはただ自然の中でいい具合に生きていることを思い出した。
もし海が生き物の始まりであるならば、 風に揺れる草や田んぼは、
私たちがいずれ帰る〈みどりの海〉のようにも思える。
free park 22
© Mayu Anzai
展覧会概要
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安齋茉由 / green sea
会期:2022 年 9 月 14日(土)〜 9 月 29 日(日)
開廊時間:12:00~18:00
休廊日: 火・水曜日 ※祝日開廊