ドイツ人の女性作家ドリス・フェターは、文化と芸術の古都スコットランドのグラスゴーでの制作活動を経て現在は故郷であるミュンヘンで制作活動をしています。ドリスは、既視感を抱く花柄など匿名性の強い図像を作品のモチーフに大胆かつ繊細な外的要素を際限なく加え、人を感傷的にする褪せた色彩や複雑な層から愛らしさの裏側に潜む小さな記憶、孤独、渇望をポエジーで純粋な感性で掬い上げています。その視線は、様々な人の生きる場所やその国のもつ文化・歴史、想いや夢、欲望などの背景に通底するノスタルジーや精神性をテーマに、私たちが心奪われる理想概念の中でふと見落とされた身の回りの思いがけない喜びを見据えています。彼女の油彩は、支持体の上でバランスとリズムを持って配置された花柄のペイントとダメージのレイヤードが、壁面やフロアとの領域にもたれながら結合し境界が無化されていきます。それはまるでスペースに浸透した広がりある平面のように、通常の二次元絵画における相互作用からは面白くかけ離れ、降起し開花するパターンの輪郭からは凛とした存在の永遠性も見え隠れします。